木版更紗とは
更紗(さらさ)
16世紀末より17~18世紀にかけて日本に輸入された、インド・ジャワをはじめタイ(シャム)・ペルシア・ヨーロッパ製を含む外国の木綿の模様染めの総称で、その技法は主として手描き・木版・蝋防染によるものであります。今日では日本への輸出品に限定せず、これらの地域でつくられた同種の染色品を広く「更紗」と呼んでいます。木綿を素材とし、肌に心地よく健康的で丈夫で、しかも華麗な文様をもつ更紗は、インドや東南アジアばかりでなく世界で広く愛されています。
古渡り更紗
主としてインド各国の好みに合わせて輸出向けに制作されたもので、17~18世紀頃日本へ伝来したものを言いますが、その中には日本で染めたかのような縞や小柄を散らしたものがみられます。紅毛船(南蛮船)によって長崎にもたらされたインド更紗は、井伊家や伊達家といった江戸時代の茶道をたしなむ大名の間で愛好され、「古渡り更紗」の名前で呼ばれました。多くは茶道具を包む仕覆や袱紗に加工され、一部は京都の祇園祭の南観音山の前掛けとして用いられたものが現存しています。
和更紗
古渡り更紗がもてはやされる一方、高価なものなのでそれを模して、長崎・鍋島藩・天草・堺・京等で更紗が作られ、和更紗と呼ばれて親しまれました。手漉きの和紙を産する日本では、更紗の制作に伊勢型紙を使います。柿渋(渋柿の汁を発酵させてつくる染料)を塗った地紙に模様を彫り、刷毛で刷り込む方法や、色糊を置く方法等が行われました。
鍋島更紗
慶長年間に朝鮮半島から連れ帰った高麗人、九山道青によって始められた更紗は、鍋島藩の保護を受け、藩の御用として作られ、質的にも高いものが「鍋島更紗」と呼ばれています。木版と型紙を併用する方法は世界的に見ても類のない珍しいものです。木版に墨をつけて木綿の生地に型押しし、模様の輪郭をかたどり、型紙を用いて筆や刷毛で煎じた植物染料を摺りこみ色を重ねるので、濃茶・青・赤等全体に濃厚で重い色調になります。
竹岱亭の鍋島更紗
日本に染織工房は多くありますが、鍋島更紗(木綿・木版刷り)を染めているのは竹岱亭だけです。そのような存在に至ったのは、とにかく「木綿」にこだわって生きてきたおかげだと思っています。木綿の染色は染めが難しく、労力の割には絹物に比べて単価が低いとされています。あえて木綿にこだわったのは、「鍋島更紗」にたどり着く過程だったのかも知れません。「鍋島更紗」の制作が奨励された佐賀藩。その藩祖・鍋島直茂公の家臣に、成富兵庫という人物がおりました。佐賀県の治水に尽力し、「水の神様」と呼ばれた人物だそうです。竹岱亭が兵庫県に所在するのも、「ひょうご」の音の由縁であり、亭主一甲が「木綿の神様」と呼ばれているのも、これまた何かのご縁かもしれません。
制作技法
1デザイン考案

資料を見てデザインを考案します。書物の中でも、古い文献には斬新なものが多く存在します。そこからアレンジをしたり、古い意匠を復元することも大切な作業です。



2木版を彫る

材料は主に100年近く枯れた朴(ほう)の木や桜、柘植等を使用。材料の準備に20年近くかかりました。デザインは無限です。版木を彫る刀や道具類は全部工房手作り。持つところを藤で巻くと彫りやすくなる工夫がされています。そうする事で微妙な使い易さが生まれます。2016年現在の木版は約5000個。木箱に入れて保管中。進行形で新しい版木が増えています。日本で木版をオリジナルに作製し木綿の作品に仕上げる唯一の工房です。気分がのると一日中版木を彫ります。手のひらに乗る大きさくらいでしたら、早いものですと2時間程でしあがります。



3木版を押す

ひとつずつ丁寧に染料をつけ心を込めて押していきます。約5000個強の版木でオリジナルの組み合わせができます。工房で使用する生地は、国内で手織りの風合を残すように特別発注した物で、仕上がりに深みが出るように草木染を施します。ほとんどは生地に案内線を引いたりせず、上下左右を目視で確認しながら押します。鍋島更紗の文様を復元するために作製した版木を使用して染め上げた生地は、工房の人気柄のひとつです。



4色差し

デザインを考えながら色を作り一筆ずつ色をさしていきます。染料は木綿用の顔料を使用。落ち着いた色目に仕上げるために基本色に茶色又は灰色等を混ぜるように心がけています。



5不織布で包む

色差しが済めば蒸しをして出来上がりです。布と布が重なると染料が移るために、一枚ずつ不織布で包みます。
6蒸し上げる

色がさえてはっきり美しくなります。もちろん蒸し器も工房で制作しました。



ギャラリー
作品集
工房で作られた作品の一部を掲載しております
生地見本
工房で作られた生地の一部を掲載しております
資料集
工房にてご自由に閲覧いただけます
講座のご案内
「伝統の染色
和更紗・型染め」教室
講師オリジナルの手彫りの木版約5000個強の中から自由に組み合わせを選び、創作更紗を楽しみます。生地は国内で特別発注した手織り独特の風合いのものを使用し、そこに草木染めを施しています。木版の線を生かしながら彩を差し、更紗の歴史を感じながら各自のペースで制作します。そして個性を引き出し、すばらしい作品を作り上げます。型染めは日本古来の染色技法で絵文様を描き彫り、染色を施します。
1日体験してみませんか?
カードケースやブックカバーが、初心者の方でも簡単に作成できます。



会場のご案内
受講生は随時受付中です。詳細は下記よりお問い合わせください。
・三木市率緑が丘公民館和更紗の会
・兵庫県立嬉野生涯大学染色クラブ
(詳細は竹岱亭へお問い合わせください)
お問い合わせ・アクセス
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